静電気はなぜ起きる?冬のパチッの正体
冬のパチッは、体にたまった電気が乾いた空気で逃げられず、金属に触れた瞬間に一気に流れる音です。同じように服を着て歩いていても、夏はほとんど起きません。
差を生んでいるのは、空気の湿り気です。しくみが分かれば、あの痛みはかなり減らせます。
冬にドアノブへ手を伸ばすと、パチッと痛い思いをすることがあります。なぜ冬にばかり、しかも金属に触れる瞬間に起きるのでしょうか。順番に見ていきます。
電気は触れた瞬間に移る
物と物が触れ合うと、その表面で電気の粒が片方からもう片方へ移ります。服を着て歩く、髪をとかす、椅子から立ち上がる。
こうした動作のたびに、体には少しずつ電気がたまっていきます。これは夏でも冬でも変わりません。
では、なぜ触れたりこすれたりすると電気が動くのでしょうか。この理由は、長いあいだはっきりしていませんでした。
2019年、アメリカのノースウェスタン大学の研究チームが、物理学の専門誌に一つの答えを発表しています。どんなに滑らかに見える表面も、ごく細かい目盛りで見れば小さな突起だらけです。
こすれ合うとその突起が曲がり、曲がったところに電圧が生まれる。それが静電気のもとになる、という説明です。
冬だけパチッとくる理由
違いを生むのは空気の乾燥です。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、東京の平均湿度は8月が74パーセント、1月は51パーセント。
夏は空気中の水分が物の表面に薄くつき、たまった電気はそこをつたって少しずつ逃げていきます。
乾いた冬は電気の逃げ道がなく、体にたまり続けます。夏と同じ動作をしているのに冬だけパチッとくるのは、電気の作られ方ではなく、逃げ道のあるなしが効いているからです。
痛みを決めるのは電気の「速さ」
労働安全衛生総合研究所によると、静電気のショックは、100万分の1秒ほどの短い間に数ミリアンペアの電流が体を通ることで起きます。反対に、同じ電気でも0.1ミリアンペア以下でゆっくり流せば、人はショックを感じません。
痛みを決めているのは電気の量ではなく、流れる速さです。金属は電気をとてもよく通すので、指が近づいた瞬間にまとめて流れます。ドアノブや車のボディが痛いのは、そのためです。
感じやすい人、感じにくい人
同じ部屋にいても、パチッとくる人とこない人がいます。同研究所は、これを体質の差ではなく、体にたまっている電気の量の差だと説明しています。
大きく効くのは靴です。天然ゴムの靴底は電気をほとんど通さないため、体に電気がたまりやすくなります。
一方、ポリウレタン系の靴底は電気を通しやすく、たまった電気が足元から地面へ逃げていきます。服装が同じでも、靴が違えば感じ方は変わります。
防ぐには「ゆっくり逃がす」
やることは一つです。金属に触れる前に、電気をゆっくり通すものへ触れておく。
コンクリートの壁や木の家具に手のひらを当ててから、ドアノブを握ります。ゆっくり流れた電気は、痛みとして感じられません。
部屋を加湿するのも同じ考え方で、空気中の水分が電気の逃げ道になります。
こはくを毛皮でこすると、わらやほこりが吸い寄せられる。この観察を残したのは、約2500年前の古代ギリシャの哲学者タレスでした。
英語で電気を指すエレクトリシティも、ギリシャ語でこはくを意味するエレクトロンが語源です。2500年前から知られていながら、しくみの説明がついたのはごく最近。
次にドアノブへ手を伸ばすときは、その前に壁へ手のひらを当ててみてください。
参考にした資料