水をかけ合うタイの正月、ソンクラーンとは
ソンクラーンは水遊びの祭りではなく、タイの伝統的な正月です。毎年4月13日から15日までが国民の祝日にあたります。
ユネスコは水をそそぐ行為の意味を「清め、敬意、幸運」と説明しており、2023年には無形文化遺産に登録されました。街をおおう水しぶきは、その儀礼がにぎやかに広がった姿です。
名前の意味は「太陽の移動」
ソンクラーンという言葉は、サンスクリット語で「移動」「通過」を意味する語に由来します。ユネスコの説明によれば、太陽が黄道十二宮の最初の星座である牡羊座に入る時期を指し、これが伝統的な1年の始まりとされてきました。
日付が毎年4月13日ごろに固定されているのは、月の満ち欠けではなく太陽の位置を基準にした区切りだからです。米の収穫が一段落する時期でもあり、家族が集まりやすい季節と重なっています。
公式の元日は1月1日、それでも4月が正月
意外に思われるかもしれませんが、タイの公式な元日は1月1日です。1889年にグレゴリオ暦を採り入れたとき、元日はまず4月1日へ移されました。
さらに1941年、ピブーンソンクラーム政権のもとで1月1日に変更されます。それでもソンクラーンは祝日として残り続け、人々が故郷へ帰って家族と過ごす「実質的な正月」であり続けています。
制度の元日と、暮らしの正月が別々に存在しているわけです。
本来の水のかけ方
もともとの水は、豪快に浴びせるものではありません。寺では仏像に香りをつけた水をそっとそそぎ、家では年長者の手に少しずつ水を注いで敬意を示します。
この儀礼はロット・ナム・ダム・フアと呼ばれ、離れて暮らす家族が帰省したときに行われます。
街の水かけ合戦はどこから来たのか
では、道行く人にバケツや水鉄砲で水を浴びせるあの光景は何なのでしょうか。ナショナルジオグラフィックは、これを儀礼としての水そそぎが極端な形へ発展したものと説明しています。
4月はタイで一年のうちもっとも暑い時期にあたり、水を浴びること自体が理にかなう季節です。祭りの前には家を大掃除する習慣もあり、水をかけ合う数日だけが行事なのではありません。
2023年、ユネスコ無形文化遺産に
2023年12月6日、ボツワナで開かれた政府間委員会で、ソンクラーンはユネスコの無形文化遺産の代表一覧表に登録されました。タイからの登録は、仮面舞踊劇のコーン、タイ古式マッサージ、南部の舞踊劇ノーラに続く4件目です。
ユネスコは評価の理由として、家族の再会や年長者・先祖への敬意、地域の協力と許し合いを育む点を挙げています。高齢の家族を大切にする文化が、社会的な孤立を防ぐ働きをしているという点も評価されました。
この行事は親から子への口伝えや学校教育を通じて受け継がれており、日付の根拠となる暦の知識はタイの占星術師たちが守り伝えています。
4月にタイを訪れるなら、水鉄砲を買う前に近くの寺をのぞいてみてください。仏像に静かに水をそそぐ人の姿に、この祭りのもとの形が残っています。
参考にした資料