人が肩に登って組み上げる、スペインの人間の塔とは
大勢の人が肩の上に登り、6段から10段の高さまで塔を組み上げます。スペインのカタルーニャ地方に伝わる「カステイ(人間の塔)」です。
2010年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。力技に見えますが、実際は細かく決められた構造の上に成り立っています。
塔は3つの部分でできている
カステイは大きく3つに分かれます。地面で塔全体を支える人だかりがピニャ、その上に伸びる柱の部分がトロンク、いちばん上の3段がポム・ダ・ダルトです。
ピニャは数百人規模になることもあり、誰でも加われます。特に高い塔では、ピニャの上にフォルラ、さらにマニリェスという補強の層を重ねます。
「3de9」という呼び名
塔には数式のような名前が付きます。「3de9」なら、1段に3人ずつ、9段の塔という意味です。
てっぺんまで人がそろった時点で「カレガット」、そこから誰も落とさず全員が降りきって初めて「デスカレガット」と呼ばれます。組み上げるだけでは半分で、崩さずに降りるところまでが完成なのです。
頂上に登るのは子ども
最上部のポム・ダ・ダルトに登るのは、体の軽い子どもです。いちばん上まで登る子はエンシャネタと呼ばれ、片手を挙げる「アレタ」という合図で塔の完成を知らせます。
登る足がかりになるのが、参加者が腰に巻く幅広の帯ファイシャです。腰を保護すると同時に、上に登る人の踏み台や手がかりになります。
塔を組む間はグラリャという笛が鳴り続け、その旋律が今どの段階かを全員に伝えます。
2006年の事故が変えたこと
2006年、12歳の少女が塔から落ちて亡くなる事故が起きました。これをきっかけに、上部に登る子どもは専用のヘルメットを着けることが義務になりました。
危険と隣り合わせの伝統だからこそ、安全の仕組みが後から足されています。もう一つ大きな転機は1980年代の女性の参加でした。
体が軽く力もある担い手が増えたことで、より高い塔が組めるようになりました。
いまも年に1万2000基
起源は18世紀のタラゴナ地方です。「バル・デ・バレンシアンス」という踊りの締めくくりに、2段や3段の塔を組んだのが始まりでした。
やがて踊りから独立し、19世紀には9段に達します。20世紀初めに一度衰えましたが、1960年代から復活しました。
カタルーニャ州政府によると、現在は100を超えるチームに約1万2000人が参加し、年間およそ1万2000基の塔が組まれています。塔を組むのは報酬を受け取らないアマチュアのチームです。
技術は世代から世代へ、実際に組む練習を通じてしか伝わりません。町の広場で、その土地の年に一度の祭りに合わせて組むのが本来の形です。
合言葉は「força, equilibri, valor i seny(力、バランス、勇気、分別)」です。一人では1段も上がれません。
誰が上に登るかより、誰が下で支えるかで塔の高さは決まります。カタルーニャの祭りでカステイを見る機会があれば、頂上ではなく地面のピニャを見てみてください。
参考にした資料