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タマムシの体はなぜ見る角度で色が変わるのか

2026年7月 · 読了3分
タマムシの体はなぜ見る角度で色が変わるのか

タマムシの体は、見る角度によって緑にも紫にも変わります。あの色は、殻に色素として塗られているわけではありません。

殻の表面に重なった十数枚の薄い膜が光をはね返し合って生まれる「構造色」です。仕組みが分かると、角度で色が変わる理由も、色があせない理由も、同じ一つの答えにたどり着きます。

塗られていない色

絵の具やインクの色は、光の一部を吸収して残りを返すことで生まれます。赤い絵の具は、赤以外の光を吸収しているわけです。

タマムシの色はこれと仕組みが違います。殻に赤や緑の色素が入っているのではなく、当たった光がはね返り合うことで色が見えています。

こうして生まれる色を構造色と呼びます。シャボン玉やCDの裏面が虹色に見えるのも、同じ仲間の現象です。

緑は16層、紫は12層

ヤマトタマムシの殻を電子顕微鏡で断面から見ると、薄い膜が何枚も積み重なっています。英国王立協会の学術誌に2011年に載った測定では、緑色の部分は16層、紫色のすじの部分は12層でした。

積み重なりの厚さは、どちらも1000分の1.3ミリほど。膜はキチンにメラニンが混ざった材料で、1枚の厚さは緑の部分でおよそ80ナノメートルです。

層の枚数と厚さが違うだけで、緑と紫という別の色になります。

なぜ角度で色が変わるのか

膜は1枚ごとに光をはね返します。はね返った光どうしは、波の山と山が重なれば強め合い、山と谷が重なれば打ち消し合います。

強め合った色だけが目に届くので、特定の色が鮮やかに見えます。ここで見る角度を変えると、光が膜のあいだを通る道のりの長さが変わります。

斜めから見るほど、強め合う色は波長の短いほうへずれます。緑が青や紫の側へ動くのはそのためです。

手のひらで転がすたびに表情が変わるのは、光の道のりが変わっているからなのです。

気づいたのは350年以上前

この不思議に最初に踏み込んだのは、イギリスのロバート・フックです。1665年に出版した『ミクログラフィア』で、フックはクジャクの羽が角度によって色を変えることを取り上げました。

羽を水に浸すと、色は消えてしまいます。色素なら水にぬらしても色は残るはずです。

顕微鏡でのぞいたフックは、羽が極めて薄い層の重なりでできていることを見つけました。ただし当時は、なぜ層から色が出るのかまでは説明できませんでした。

光の波が強め合ったり打ち消し合ったりする「干渉」として決着がついたのは、およそ140年後のトマス・ヤングの実験からです。

玉虫厨子の翅は今どうなっているか

日本ではタマムシの翅が古くから飾りに使われてきました。奈良・法隆寺に伝わる国宝の玉虫厨子は、7世紀に作られたとされる高さ約2.3メートルの厨子です。

金銅の透かし彫り金具の下には、タマムシの翅が敷き詰められていました。ただし現在、その翅はほとんど残っていません。

構造色は色素のように化学変化で色あせることはありませんが、翅という材料そのものが千年以上の時間に耐えきれなかったのです。あせないのは色であって、物ではありません。

タマムシの輝きは、色ではなく形が作り出しています。次にタマムシや玉虫色の製品を見かけたら、少し角度を変えて眺めてみてください。

色が動けば、それは色素ではなく、光が層のあいだで重なり合っている証拠です。

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