家の中に眠るお金、日本全体で数十兆円?
銀行に預けず家に置いたままの現金を、タンス預金と呼びます。その総額は民間の試算で、2025年7月時点におよそ47兆円。
ただしこれは実測値ではなく推計値です。国のどこにも「タンス預金の統計」は存在しません。
タンス預金は誰にも数えられない
日本銀行が把握しているのは、世の中に出ているお札の総額までです。2025年の年末時点で、流通していた銀行券は120.6兆円、枚数にして183.2億枚でした。
しかし、そのお札が店のレジにあるのか、企業の金庫にあるのか、家の引き出しにあるのかまでは追えません。だから「タンス預金は何兆円」という公式統計は作れず、数字はすべて推計になります。
1万円札の枚数から推し量る
推計の手がかりは、券種ごとの動きの差です。千円札は日々の買い物で使われ、1万円札はまとめてしまい込むのに向いています。
そこで、1万円札だけが千円札と違う伸び方をしていれば、その差は使われずに眠っている分だと考えます。第一生命経済研究所の試算では、タンス預金は2024年1月に60.0兆円でピークを迎えました。
新紙幣で9.6兆円が動いた
2024年7月3日、20年ぶりに新しいお札が発行されました。ここで眠っていたお金が動き出します。
同研究所の試算では、ピークの60.0兆円が2024年9月には50.4兆円まで減りました。9.6兆円の減少です。
2025年9月の日本経済新聞の報道では、2025年7月時点で約47兆円、ピーク比で2割ほど減ったと伝えられています。金利が上がって預けたほうが得になったこと、広域強盗事件を受けて自宅に多額の現金を置くことを避ける動きが理由に挙げられています。
家に置けば税務署から見えなくなる、というのは誤りです。国税庁は相続税がかかる財産を「現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」と定めています。手元の現金も、当然この中に入ります。
低金利が積み上げた現金
タンス預金は昔からこの規模だったわけではありません。第一生命経済研究所が2019年3月に公表したレポートは、タンス預金が初めて50兆円を超えたと報告しています。
預けても利息がほとんどつかない時期が続けば、手元に置いても損をした気になりません。逆に金利が上がれば、同じお金は銀行へ戻り始めます。
2024年からの減少は、その動きが実際に起きた記録です。
1人あたり約100万円のお札
120.6兆円を日本の人口およそ1億2千万人で割ると、1人あたり約100万円になります。もちろん実際には銀行の金庫や店のレジにも積まれていますから、家庭に均等に置かれているわけではありません。
それでもこれだけのお札が現金のまま存在していることが、タンス預金という話題が繰り返し登場する土台になっています。
タンス預金の増減は、家計が何を心配しているかを映す温度計です。金利がつかなければ手元へ、金利が上がれば銀行へと動きます。
まずは自分の家にいくら現金があるか、一度数えてみるところからです。
参考にした資料