夜になるとなぜ眠くなる?体内時計と光の関係
夜に眠くなるのは、疲れがたまったからだけではありません。脳の奥にある小さな神経のかたまりが「夜が来た」と判断し、体を眠りへ切り替えています。
判断の材料になっているのは、目から入る光の量です。眠気は疲労の問題であると同時に、時刻の問題でもあります。
体内時計は24時間より11分長い
体のリズムを取りまとめる親時計は、脳の視床下部にある視交叉上核という部分です。左右合わせて約2万個の神経細胞でできています。
1999年に科学誌サイエンスで報告された実験によると、人の体内時計が刻む一周は平均24.18時間でした。24時間より11分ほど長い計算です。
放っておけば毎日少しずつ後ろにずれるため、時計は毎朝合わせ直す必要があります。同じしくみの時計は脳だけでなく、肝臓や皮膚など体のほぼすべての組織にあります。
親時計の役目は、それらの歩調をそろえることです。時計を動かす遺伝子のはたらきを解き明かした3人の研究者は、2017年にノーベル生理学・医学賞を受けました。
目には明るさ専用のセンサーがある
時計を合わせる合図は光です。網膜には、ものの形を見る細胞とは別に、明るさを測ることを専門にする細胞があります。
この細胞が持つメラノプシンという色素は、480ナノメートル前後の青い光にもっとも強く反応します。受け取った情報は、目から視交叉上核へ直接伸びる神経を通って届きます。
つまり脳は景色を見ているのではなく、青い光がどれだけ届いているかだけを測っているのです。
メラトニンは「夜が来た」という合図
夜だと判断した視交叉上核は、脳の松果体にメラトニンというホルモンを作らせます。
メラトニンは眠らせる薬ではなく、体じゅうの細胞に「今は夜だ」と伝える合図です。合図が届くと手足の血管が開き、体の中心にたまった熱が外へ逃げていきます。
深部の体温が下がっていくこのタイミングで、人は眠りに落ちます。
眠気をつくるしくみは二つある
体内時計だけでは眠気を説明しきれません。起きている間、脳にはアデノシンという物質が少しずつたまり、眠りたい圧力を高めていきます。
1982年にアレクサンダー・ボルベイが提唱した二過程モデルは、このたまる眠気と体内時計の二つで睡眠を説明します。徹夜明けの朝に妙に目が冴えるのは、圧力が最大でも、体内時計が朝に覚醒の力を強めて打ち消すからです。
コーヒーで眠気が飛ぶのは、カフェインがアデノシンの受け口をふさぐためです。夜ふかしが続けば圧力だけが積み上がり、休日の朝寝坊では今度は時計のほうがずれます。
夜の光が時計を後ろにずらす
このしくみの弱点は、脳が光の出どころを選べないことです。夜に強い光を浴びると脳は「まだ昼だ」と受け取り、メラトニンの分泌を抑えます。
アメリカ国立衛生研究所も、夜間の電子機器の光が体内時計を乱すと注意を促しています。ずれた時計を戻す手段も、やはり光しかありません。
夜は照明を落とし、朝は外の光を浴びる。この二つで時計は前へ戻ります。
今夜は寝る前の30分だけ、画面を消して部屋を暗くしてみてください。体内時計が一日かけて用意した合図は、それだけではっきり届くようになります。
参考にした資料